2016年4月9日
4月9日。
父と一男さんと連れ立って、姉夫婦のいるあの家に行く日でした。
朝9時に私と一男さんは合流し、父の住む街へ向かいました。
私たちを待っていた弱く痩せた父からは、無理をして興奮を抑え込んでる様子が伝わってきました。
私が運転をし、助手席の父と後部座席の一男さんは久しぶりの挨拶も早々に、今回の話し合いについて話し始めました。
「もうさ、今までああだこうだの話は置いといて、これからどうするかの話をしようよ。
母親に暴力振るって、病気の父親を追い出しておいてさ、やり直すっていうならそれなりの態度を示してもらわないといけないし、それができないならあそこは姉さんの土地なんだから。姪だと思って俺も可愛がってきけどとんでもねえ。信じられねぇよ。ひかるのことだってひどい嘘ついて俺を取り込もうとしてさ。あいつらには出てってもらってよ。」
「俺もそう思ってるよ。出て行かないならブルドーザーでもなんでも使って家をぶっ壊してやるよ。俺が建てた家なんだから。俺の自由だろ。」
2人の方針会議はすぐに終了し、その後はお互いにその話を避けるように昔話に花を咲かせていました。
到着まであと1時間程度。海沿いの磯料理屋さんで父おすすめのイカのお刺身を食べましたが、私は全く喉を通りませんでした。
これから行くあの家には父も一男さんも周代さんもいて、何も怖がることはない。
片道3時間も、久しぶりの楽しいドライブだと思えばいい。
しかし私は、膝の震えと込み上げる不快感が治まることはありませんでした。
「あの家に行く。」
姉の顔が頭に浮かんでは、思い出したくもない恐怖心が消えることはありませんでした。
カーブを曲がった先に、あの家が見えてくる。
母は今、どんな気持ちであの家にいるのだろうか。
私は心底家を建て直すことに賛成した自分を恨んだのでした。