父と母と私

2022年8月31日

母の限界

母にとって故郷であり第二の人生のスタート地点は、家の建て直しにより今までと変わらぬ景色に見えながら、まったく異なる場所になりました。

家族が求めているものは、お互いの幸せではないのでしょうか。

これは家族間における 建物収去土地明渡請求 の記録です。


母に対する姉の急激な態度の変化に、母もかなり疲弊していきました。

私は母に、父のところに来て一度相談してみてはどうかと提案しました。

離婚後、父と母の接点はほとんどなく、姉か私を介してのやりとりがある程度でしたが、家を建て直して名義を姉にしてしまったことにより発生した事態を、母の口から共有しておくべきだと私は思っていました。

父にも母が来ることを受け入れてもらえ、私たち3人は姉に内緒で会うことになりました。

かつて20数年前に家族だった家で、父と母と私は再会しました。

その日、母はこれまでのことを父に話し、耐えられない状況にあると伝えました。

父は母に同情し、名義を姉にしたことを悔やんでいました。

「どうしても耐えられなかったらここに戻ってもいいけどな。近所に恥ずかしいからあんまり家から出なけりゃね。」

憎まれ口を含んだ父のこの言葉に、母は救われたようでした。

次の日、私たちは3人で奥多摩の滝を見に行きました。

滝への道中、杖を2本借りてきてさりげなく母に1本渡す父。生まれてこのかたみたことのない母に対する父の気遣いに、驚きと感激が溢れました。

物心ついた時から父と母が普通に会話しているところを見たことがなかった私。

私はただ、こういうのを見てみたかっただけなのかもしれません。

帰りに3人でうなぎを食べて帰りました。

父と会い話したことで、いざとなったら逃げる場所があるという思いが、母の気持ちを少し強くしたようでした。

母はまた、あの家に帰って行きました。

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