2022年8月30日
若くして地方から上京し、がむしゃらに働いて小さな成功を手に入れ、家庭を顧みなかった父。
70歳を過ぎて母の家を建て直すために大金を拠出した父は、何を思い、何に期待していたのか。
これは家族間における 建物収去土地明渡請求 の記録です。
両親の離婚後、私と父には10年の空白期間がありました。
父から再婚相手と死別したという連絡をもらってから、これまでの全てを上書きするように親子関係を再構築したように思います。
東京にいる唯一の身内として、お互いが頼れる存在として13年が経とうとしていた2011年、会社をたたんだあとの悠々自適な暮らしの夢を語っていた父は、熱海に別荘が欲しいというようになりました。
私はそのことを姉に伝えました。
姉は「熱海に別荘を買うくらいなら母の家を立て直して、みんな一緒に住めばいい」と言いました。
私は
別々になった家族がまた一つになるかもしれない
率直にそれしか考えつきませんでした。
心から嬉しい気持ちになり、姉への感謝の気持ちが溢れたことを今でも覚えています。
姉の提案を父に伝えたところ、父はとても乗り気になりました。
肝心の母は、「お父さんも一人で寂しいのね」といったようなことを言い、受け入れたように思っていました。
私は、誰の気持ちも、誰の立場も、何も考えていなかったのかもしれません。
ただ自分の喜びを優先し、このあと起こる悲劇に対し何の予想もできませんでした。
この出来事が、その後の父と母の人生を大きく変えてしまった。
後悔してもしきれない思いです。
そしてあっという間に母の家は取り壊され、家族の関係も壊れていったのでした。